1 お金のマクラ
落語で最初に語る身近な話題をマクラと言う。
現在の落語界で最も人気を誇る立川志の輔。
立川志の輔の2010年創作落語「狂言長屋」のマクラ。
2009年に麻生内閣が国民に12000円の給付金支給。
国民を元気にするためと言うが12000円で元気か?
そこで志の輔は毎日1人1円拠出するロトを提案。
国民1人1円でも全国民分なら合計1億円になる。
当選金を100万円にすれば毎日100人が当選する。
12000円を毎日1円ずつに分ければ32年続けられる。
毎日100万円100人当選32年続ける方が景気大効果。
志の輔創作落語「ガラガラ」では耐震偽装のマクラ。
マンション建設で耐震工事の手抜きが社会問題化。
マンションは通常建築前から販売契約を開始する。
ある意味でこれほど不合理な契約は他にない。
通常契約は現物を念入りに確認し納得し契約する。
所が高額マンションでは物も見ず数千万契約締結。
結果的に満足する人や不満の人など様々発生する。
18年前の落語マクラを彷彿する事例が中国で発生。
マンション販売の大手不動産会社が続々経営危機。
マンションの建設途中で工事中断再開見通し不明。
マンションのローン購入者は借金だけ残り続ける。
借金は払い続けマンション入居不能は正に悪夢!
人はお金の使い方にいろいろな考え方を持つ。
お金を上手に使いたいとの思いは皆共通だろう。
でも自分の思い通りにお金を使えない事は多い。
お金との向き合い方は人により千差万別だろう。
人々は様々悩みながらお金と付き合う。
2 お金の疑問の発端
20年余前にお金に疑問を抱く出来事があった。
当時は日本の借金(国債等)が1千兆円に到達寸前。
一部経済専門家が日本は早晩破綻すると予測。
当時は藤巻健史や浜矩子の本をよく読んでいた。
それから20年超を経た今日本は破綻していない。
日本の借金(国債残高)の推移グラフ
因みに現在の日本の借金は1300兆円。
※[参考]NHK NEWS WEB “国の借金”1297兆円余
当時の私は家を建て替えてローンを支払い中。
自分が借金を払えなければ抵当設定した家を失う。
我が身の不安と国が重なり国への不信感が増す。
私は家の建築のために1千万円強の借金をした。
私は地道に借金を返済し続けた。
20年過ぎて私は無事家のローン返済を終えた。
一方で国の借金は20年前から益々増加し続ける。
私は近い将来国が破綻する事を本気で心配した。
だが借金は膨らみ続けたが国は破綻気配無し。
私がローン返済を怠れば財産を失うと頑張った。
国は借金返済どころか借金増額しても大丈夫?
一体「お金」とは何なのだろう?
私のお金に関する疑問は20年前から始まった。
3 近年の国家の通貨危機事例
世界ではお金の管理失敗で危機になる国が続発中。
約15年前にギリシャで国家財政危機があった。
国が人口の25%を占める公務員経費の膨張を隠蔽。
財政危機を隠し続けたが最終的に露見し国家危機。
その後政権交代と不人気政策の強行で危機脱出。
※参考:ギリシャ危機の解説(アセットマネジメントONEより)
更に近年は発展途上国を中心に財政危機が続発中。
発展途上国家は借金で事業を始め国家発展を目論む。
だが事業が順調に進まなければ借金返済に窮する。
また世界不況等で経済が急激悪化する貧国もある。
結果的に通貨価値が暴落して財政危機に陥る。
通貨危機の国々に関する情報
① 世界中で多数の国が借金等で通貨危機の状態。
※参考:財政破綻予備軍が34か国~NHK国際ニュースナビ
主要産業の原油の価格暴落で国民の3/4が極貧
※参考:国際協力NGOワールドビジョン 2022.1記事
失政と食料・燃料不足で他国融資が返済不能化
※参考:スリランカ破綻分析-キャノングローバル研究所
④ エチオピアは2023年にデフォルト
インフラ開発目的の他国融資が債務返済不能化
※参考:エチオピアのデフォルト-Yahoo!News
国の財政運営の失敗が危機に繋がる事が分かる。
日本で借金が増え続ける事態は財政運営失敗では?
財政危機になる国家とそうでない国家の違いは何?
4 日本と他国の相違点
借金返済不能(デフォルト)ならば国家は破綻する。
国や人は何らかの夢の実現のため借金する。
上手く夢を実現し借金を完済する事例は多い。
だが夢の実現に困難が生じると借金を重ねる。
最終的に借金返済できないと強制返済を迫られる。
財産没収され贅沢を否定され最低生活で生き延びる。
結局借金返済の可・不可の判断が以後の命運を決める。
借金しても未だ大丈夫と判断されれば現状継続できる。
財政破綻した国は現状では返済不能と判断され破綻。
日本の場合は現状維持で未だ大丈夫と判断されている。
世界一の借金大国なのに何故未だ大丈夫となるのか?
未だ大丈夫という判断の主な理由を3点挙げる。
(1) 日本は国家同士での債務超過無し
先ず日本は債務(借金)の一方で債権(貸金)もある。
例えば日本は米国国債を世界で最も保有している。
日本の米国国債保有額は1兆米ドル超(150兆円超)。
※参考:米国政府の債務保有国~「アライアンスバーンスタイン」サイト
(国全体としての収入が支出を上回り続けている)
※参考:長期的な日本の経常収支変化~内閣府ホームページ
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je19/pdf/p03011.pdf ※参考:日本の経常収支は1985年以降最大~NHKニュースWEB
だが日本は他国に対し黒字を確保し国家間債務超過無。
(2) 日本国内の借金は家庭問題?
破綻危機の借金国家では他国から借金をしていた。
一方で日本政府は赤字国債発行で借金を増やした。
日本の借金は国が国民に国債発行の形で借金する。
つまり親が子に借金している様な家庭内借金問題。
見方を変えると親は借金漬でも子は大金持と言える。
家庭内問題なら他人(他国)の干渉を受ける事はない。
イザとなれば親が子から強引に金を取り上げられる。
国が増税する事で借金返済する事も有り得る。
(3) お金は人々の幻想の産物
お金は「単なる紙切れ」と言う事は皆知っている。
でもお金と物を交換できると皆信じている。
皆信じているからお金の価値が成立している。
「お金」と「物」の交換を皆信じる事で幻想が成立。
財政破綻国家ではお金の増刷が通貨暴落を招いた。
お札の大量発行は人々のお札価値疑念に火を付けた。
日本はお金を増やし続けても瀬戸際で信用維持中。
今は未だ国の信用が維持されお金も信頼されている。
だが国の信用が失われた時にお金幻想は消滅する。
お金幻想が何時まで続くかは誰も予想できない。
5 お金の役割と効果
(1) お金の3つの役割
お金には3つの役割がある。
・ 価値尺度 (全ての物に値が付けられる)
・ 決済手段 (全ての取引はお金を介する)
・ 価値保存 (お金を貯めて蓄財できる)
※参考:お金の解説~THE GOLD ONLINE サイト
(2) お金の信用と幻想
お金は皆が信用する事で成り立っている。
お金の乱発や借金拡大はお金の信用を失墜する。
お金の信用を失えばお金の価値は一気に暴落する。
つまりお金は皆が信じる幻想で成り立っている。
※参考:1万円札の価値理由~「フラスコ」サイト
(3) お金がもたらす物の流通と価値変動
お金の歴史を想像でイメージしてみたい。
大昔は取引の大半が食料だった。
例えば海で採れる物と山で採れる物の物々交換。
その後に食べ物以外の衣類等日用品も加わる。
更には生活環境の土地建物も取引対象になる。
そして近代に入り一気に取引物が拡大する。
電化製品や車や各種機器類、株や証券類等々。
昔はほぼ無料だった水も今では立派な取引商品。
更に現代は仮想通貨(ビットコイン等)まで取引。
時代と共に取引する物は増大し価格も大変動した。
時代と共に多くの物が値上がりしたが変動幅は様々。
私達の身近な食物の一つである卵の価値変化。
卵は戦時中や戦後は高価な食料だった。
故・柳家小三治の「卵かけご飯」という落語CDがある。
戦後食料難時代は卵1個を家族全員で分け食べた。
その昔高級品の卵は現在では1個20円前後の超安値。
一方で土地の地価は昔と今で価値が激変した。
昔から現在に至る価格の推移を知るサイトがある。
サイト中から卵・米・初任給・地価を抜粋加工し掲載。
1950年 2020年
卵1個の価格 16円 22円
米10kg価格 1000円 4500円
高卒初任給 3500円 18万円
銀座坪価格 40万円 2.1億円
(一部は四捨五入して表記した)
※参考: 「明治・大正・昭和・平成・令和 値段史」
~ コインの散歩道 tadahiki@nifty.com ~
これで分かる事は個別で価格変動が全く違う事。
70年間で卵は2倍未満、給料は50倍、土地は500倍。
ただし卵も鳥インフル流行時は一時的に急騰した。
卵や米等の大量流通物は価格変動が抑制傾向になる。
他方で不動産・貴金属等の稀少品類は高騰し易い。
但し高騰した物は事情変化があると急落も起こる。
時代と共に取引する物や数は急拡大した。
また世界人口の増加も取引拡大の主要因だろう。
取引材料の拡大増加に伴いお金の需要も高まる。
そしてお金が増える事で取引も益々拡大する。
取引材料の拡大とお金の拡大が相互連動し続ける。
この取引材料の拡大は一体何をもたらすだろう?
購入選択肢の多様化は人々の行動の多様化を生む。
「買う」「買わない」の選択肢増加は価格変動を生む。
売れない商品を買わせるには安くせざるを得ない。
一方で需要が供給を上回れば必然的に価格は高騰。
取引材料が増え選択肢が増える事は価格乱高下を生む。
需要と供給が安定的な食料品等は価格変動が少な目。
一方で品薄の人気商品などは価格が高騰し易くなる。
私達の社会は二極化している様に思われる。
安定的価格の食料等と投機対象の稀少品類の高騰。
取引対象が年々増加する事で貨幣も増加する。
貨幣増加する事で稀少な投機品等は高騰し易い。
高騰し易い物を取引する富裕層は財産が増え易い。
結果として格差拡大構造が生まれる。
お金の増→高騰商品発生→富裕層の富の増→格差拡大
という因果関係が成立する。
6 お金の正体(私見)
昭和から令和までの一部物価の推移について前述した。
卵は1.4倍、米は4.5倍、初任給は50倍、土地は500倍。
この事実を別の言い方で表現してみたい。
・70年間の卵の値上りと他の値上り幅の比較
70年間で米は卵より3倍値上がりした。
同様に初任給は卵より35倍、土地は卵より350倍値上り。
・70年間の円の価値推移
円の価値の下落幅は卵では30%減だが米は450%減。
初任給では5000%減で、土地では50000%減。
100年前は100円で家族が1月生活したが今は1日も無理。
物の価値の値上がりは円の価値の値下がりを意味する。
世の中には様々な物が溢れかえっている。
例えば私一人分の物でも自分で既に数え切れない。
家族全体の物になると更に多く全く手に負えない。
それが国全体となるとどれだけか想像できない。
そして世界中の物なら更に誰一人分からないと思う。
だが一つ一つの物を見た時にその価値は予想できる。
勿論予想した価値と実際の価値に大差もあると思う。
何れにしろ物の価値はお金換算視点で考えられる。
前段で卵や土地の比較を何倍や何%で言い表した。
比較の仕方は色々あるがお金で表すと最も分かり易い。
お金は物の比較を最も分かり易く表現する指標と思う。
お金は人々の共通尺度という点で他と明確な差がある。
ただお金自体も比較される比較対象となっている。
つまり尺度以外では他の物と全く同じ立場と言える。
日本ではお金の発行は日銀(硬貨は政府)が行う。
お金以外の他の物は誰でもできるがお金だけは別。
だからお金は特殊と言えるが基本は他の物と同じ。
だからお金の発行自体も特別制約はされない。
但しお金を乱発すると暴落するため数量管理される。
一方で世の中の取引対象の物は日々拡大し続ける。
そして取引対象が多い国ほどお金の需要も増える。
お金自体は全ての事柄を比較の対象にする。
・物同士の差(例えば卵と米と土地の価値差)
・個人間の差(貧困層と富裕層の資産や所得差)
・国同士の差(貧困国と富裕国のGDP格差等)
「お金の正体」は「全ての物の格差付け」と私は考える。
人は自らの生き方を選択する時に右か左か迷う。
選択する際の尺度には様々な尺度があると思う。
自分に有利か不利かは選択の際の大きな尺度と思う。
そして選択の尺度の一つとして価値判断がある。
欲しい物があると手間と必要性を天秤にかける。
必要性が高ければ手間(費用)があっても取得する。
人の生き方を左右する尺度の一つがお金だと思う。
そしてお金は尺度の役割維持のため厳格に扱われる。
しかし尺度以外の面では他の全ての物と変わらない。
つまり物は多量なら価値は下がり少量なら価値は高い。
お金が多過ぎるとお金の価値は低下する。
その最たる事例はデノミ(通貨切り下げ)。
ベネズエラは6桁切下げ(日本例:100万円→1円)した。
※参考:ベネズエラデノミ通貨100万分の1~日経新聞
お金も多くの物と同じ様に価値変動する物と言える。
つまり「お金は尺度」だが「お金は物」でもある。
日本では借金を拡大(お金を増刷)し続けてきた。
一方で取引対象物も世界規模で拡大し続けている。
現代社会は実体が見えない物まで大規模取引される。
仮想通貨、ゲーム、AI人工知能等の実物の無い取引。
それら取引にどれだけお金が必要かも分からない。
逆に言えばお金があるほど取引も多くなるとも言える。
お金と物の関係は両方が共鳴して増え続けている。
私見は、お金の適正数量管理が不明な時代だと考える。
お金の私見[後編]ではお金の格差を深掘りしたい。