健康検査の基準値について

約1か月ほど前から母親の病院通いに付き添っていた。
「ばね指」という病気で小さな手術後に経過観察とリハビリ治療を行った。
10月上旬から1か月の間で10回ほど通い11月2日で病院通いは終了。
初めて高齢者の医療に立ち合い医療費の安さを実感。診療費の約半数は100円以下。

「命の値段が高すぎる!」(永田宏著・H21.7.ちくま新書刊)
この本によると昔は老人医療は無料。現在75歳以上の後期高齢者は約1割負担。
後期高齢者医療制度は平成20年開始。同時にメタボ健診がスタート。
この2つの制度は急速な高齢化に伴う医療費の増大に対応した政策。
高齢者に少しでも医療費を負担させつつ、メタボ健診で医療費の増加抑制を目指す。
しかし何故かメタボ健診の基準値は従来の基準値より厳しく設定している。
善意に解釈すれば基準を厳しくし早期対策することで健康増進・医療費削減を目指す。
だが厳しい基準は諸刃の剣。基準超過者を増やして医療費増大の可能性もある。

メタボ診断の基準とはどうなっているのか。(メタボの基準値)
(1)腹囲…男85cm以上、女90cm
(2)血糖…血糖値100mg/dl以上、HbA1c5.6%以上(NGSP)
(3)脂質…中性脂肪150mg/dl以上、HDL40mg/dl未満
(4)血圧…収縮期130mmHg以上、拡張期85mmHg以上
このうち(1)に該当し(2)~(4)の内の1つに該当すればメタボ要対策者となる。

一方で従来の基準値はどうなっているか調べてみた。
従来の基準値を調べた対象は「血糖値」「コレステロール値」「血圧」の3種類。
従来の基準値は基準を定めた団体で異なったり年代で変わったりしている。

(1) HbA1c値(NGSP)(正常・異常値)
「日本糖尿病学会」 正常5.9以下、要注意6.0~6.4、異常6.5以上
        (但し5.6~5.9は正常高値で将来糖尿病の可能性有)
「厚労省・健保連」 正常5.5以下
「日本人間ドック学会」正常5.5以下、要注意6.0~6.4、異常6.5以上
 【参考】糖尿病ネットワーク(http://www.dm-net.co.jp/calendar/2013/020036.php)

(2) コレステロール値(基準値)

「日本動脈硬化学会」 H07 [総コレ] 男女共 240以下
H08 [総コレ] 男女共 220以下
H19 [総コレ] 男女共 無し [LDL] 男女共 140以下
「日本人間ドック学会」 H26 [総コレ] 男女共 199以下 [LDL] 男女共 119以下
「厚労省・健保連」 H27 [総コレ] 男254 女280以下 [LDL] 男178 女190以下

 【参考】「健康常識はウソだらけ」(奥村康著H24.4WAC刊)
 【参考】コレステロール情報サイト(http://www.axmm.org/neotype.php)

(3) 血圧値(基準値)

「厚生省・健康診査」 H01 [収縮] 180未満 [拡張] 100未満
「WHO世界保健機関」 H01 [収縮] 160未満 [拡張] 95未満
H11 [収縮] 140未満 [拡張] 90未満
「日本高血圧学会」 H12 [収縮] 140未満 [拡張] 90未満
H16 [収縮] 140未満 [拡張] 90未満
「厚労省・メタボ健診」 H20 [収縮] 130未満 [拡張] 85未満
「日本人間ドック学会」 H20 [収縮] 130未満 [拡張] 85未満
H26 [収縮] 148未満 [拡張] 95未満
H26 [収縮] 130未満 [拡張] 85未満

 【参考】「高血圧はほっとくのが一番」(松本光正著H26.4.講談社+α新著刊)
 【参考】個人のサイト(http://blog.goo.ne.jp/mame-papa/e/血圧の基準値の変遷)
 【参考】個人のサイト(http://smile5.net/Entry/23/)

[注1]HbA1c値
 HbA1c値は各団体で基準がほぼ統一されている。
 但し平成25年に日本基準のHbA1c(JSD)から国際基準のHbA1c(NGSP)に変更された
 ことで基準値が+0.4加算されている。過去データの取扱いでは注意が必要。
 (先日ブログ掲載した牧田医師の糖尿病判断値5.2は0.4低い日本基準と思われる)
 また糖尿病治療者や高齢糖尿病者では目標値が別に設定されている。
 更に日本糖尿病学会では治療目安の数値が別に示されていて紛らわしい。

[注2]コレステロール値
 人間ドック学会と健保組合は同一基準。
 H27記載のドック・健保連基準値は改訂予定値。いつから適用されるかは未定。
 ドック・健保基準では低値基準及び、女性年齢毎基準も定められているが記載略。
 動脈硬化学会はH19に従来の総コレステロール診断を撤廃しLDL・HDL診断に改訂した。
  【参考】omronサイト

 (http://www.healthcare.omron.co.jp/resource/guide/dyslipidemia/02.html)
 なおLDL値の悪影響について動脈硬化学会と脂質栄養学会で見解が分かれている。
 【参考】産経ニュース
 (http://www.sankei.com/life/news/150525/lif1505250013-n3.html)

[注3]血圧
 血圧については以前は年齢により基準を加算する考え方が主流だった。
 具体的には「年齢+90以下は正常」と1970年頃まで医学の教科書に明記。

 なお日本高血圧学会のH12拡張基準値は70~80歳代で10ずつ加算があった。
 世界の潮流と共に日本も年数を経る毎に基準値が低下している。
 なお年齢と共に血圧が高めになることは近年徐々に考慮されつつあるらしい。
 但し年齢を反映した基準値設定の見直しまでは現段階では行われていない。
 人間ドック学会H26に2種類基準を記載しているのは、上段が一度公表された基準。
 しかし様々批判等を受け従来の基準を変更しないと説明。(smile5サイト参照)

上記3種の基準値のうち血糖値についての証拠(エビデンス)はほぼ確立しているらしい。
しかしコレステロールの基準値については過去から大転換しつつあり、高血圧についても一部の良心的医師から現行基準値への批判の声が上がっている。
次回ブログでそれらの意見を紹介してみたいと思う。

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