6月12日(日) 35日目(おまけ) 1番霊山寺へ

天気 曇りのち雨

昨日88番大窪寺を打ち終え、四国88ヶ所の巡礼は完了した。
しかし、折角四国をほぼ一周したのだから、この際最初の寺に戻り一周を完成させたい。
昨日立ち寄ったお遍路サロンの職員の人も、昔より完全一周を目指す人が増えていると話していた。
私の望みも完全四国一周。

今日のルートは、香川と徳島の県境方面の海岸沿いに向かって進んだ後、山側に進路を変え標高350m余の大坂峠を越える。
そして3番金泉寺へと道を下り、3~2~1の順にスタート時と逆の道を辿って1番霊山寺で一周完了する。

昨日中尾休憩所に着いた時は夕暮れ時だったこともあり、薄暗く湿っぽいイメージで良い印象ではなかった。
しかし夜が明け始めの林道を歩くと、気持ち良さで満たされた。
88ヶ所の納経を終えた安堵感が大きく予備食料もほぼ食べ尽くしザックも軽い。
ああ、涅槃のような心地良さ。

だが唯一、昨日最後の大窪寺で水を調達せず次の水場に予定していた白鳥温泉まで歩かなかったため、昨夜から今朝にかけ水分摂取が十分ではない。
いつものように汗を舐めて水分補給の代わりにしたいが、下り気味の平坦な道が続くためほとんど汗もかかない。
そのうち何とかなると思っていたら1時間強歩いた所で自販機が現われた。
ペットボトルのスポーツドリンクを購入し、本当は一気飲みしたいところを昨日の遍路サロンの教訓を活かし、歩きながら時々チビチビ飲むようにして1本空けるのに約5時間かけた。

ようやく海沿いまで来て、いよいよ大坂峠越えの登り道という時に後ろから呼び停められた。
近所に住むオバさんが、
「大坂峠に向かうのならば車道の道よりも近道があるから教えてあげる。」
と私にオイデオイデをする。
私は大坂峠越えは車道の道しかないと思い込んでいて、近道の遍路道標識を見落としていたのだ。
近所のオバさんは5分ほど私を案内し、もう間違わないと思われる場所まで一緒に来てくれた。

車道のつづら折りの坂を数回横切る直線的な広い林道の遍路道。
遍路道の途中に展望所があり、立ち寄ってこの先のルートを確認した。
あれ?車道の方の最高標高地点は250mなのに、遍路道の最高標高地点は360mではないか。
遍路道の方が距離は短いが高い所まで登るということだ。
どっちが楽だったか微妙。
だが、坂道は全体的に緩い上りが続くアップダウンのない比較的楽な道で、しかも文化庁選定歴史の道百選にも認定された由緒ある道。この道を来て良かった。
オバさんに感謝。

この日は風が強く、竹やぶの中の道を通った時にそばで枯れた竹が強風に煽られてガラガラと倒れてきた時は驚いた。
峠を越えて民家が見え出した頃から、曇り空から雨が落ち始めた。
少し待てば雨は弱まるのではと淡い期待を抱きたまたま通りかかった阿波大宮駅に入ったらついついうたた寝。
10分ほどで目覚めたが雨は変わらず降っている。
諦めてレインウエアを着用して出発。

それほど強くない雨の中、頭と顔を雨に晒しても気持ち良いと感じて歩いていると、私の脇に車が停車して中からご婦人が「100円ショップで買ったビニール傘だけど良かったら使って」と傘を差し出した。
とても嬉しかったが傘は荷物になるため持たないことを詫びて伝え、お気持ちだけありがたく頂戴した。
そこで一句浮かんだ。

雨の道
接待傘で
こころ晴れ

雨降る中、3番、2番と寺を通過し、無事1番霊山寺に到着。
四国一周の旅は雨の中で終了。
雨は濡れて不快だし後始末も大変だが、貴重な水を提供してくれるし何より印象的なお接待に出会う機会を与えてくれた。
お遍路は多くの思い出を私にくれた。
般若心経ではこれら全てが幻だと説く。
過ぎてしまえば夢のよう。
最高のひと時の夢をくれた四国遍路道に心から敬意と感謝を捧げる。


朝日の差す樹林帯の道を歩く


途中で現われた小さい池


予約とれず宿泊できなかった白鳥温泉


早朝の車の少ない道を歩く


大坂峠越えの近道を教えてくれた近所のオバさん


途中、展望所に立ち寄る


県境から更に先に大坂峠がある


大坂峠(標識がなく分かりにくい)


大坂峠からの急下り


竹やぶでは強風で枯竹の倒れる音に驚いた


雨が降り出したので駅で休憩


3番を通過


2番を通過


1番霊山寺に到着


荷物を降ろして、四国一周終了

05時20分 中尾休憩所を出発
11時25分 大坂峠越え
14時35分 1番霊山寺に着(歩き遍路完了)
17時20分 徳島市内ホテル着(バス利用)

歩行時間 8時間30分
歩行距離 36km

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