野宿に関する私見

私は近年3年毎に四国遍路旅をしてきた。
歩行中は様々な事を考えながら歩いた。
野宿場所も歩行時の沈思黙考材料の一つ。

私の場合は旅前に野宿候補地を決めて出発する。
9割ぐらいは予定どおりの所で野宿する。
それでも毎回トラブルの無い事を願って過ごす。
1割は予定外の場所で野宿する。
予定外の場合は更にトラブルを怖れ慎重になる。

今年の四国の野宿では不安な接近が2度あった。
一度目は遍路旅21日目の愛媛の常磐公園。
予定地と異なる今治市街地の小さい公園で急遽野宿。
土曜の夜の20時過ぎに若者が公園に来訪。
ベンチに腰掛け友人とスマホ電話中に私のテント発見。
驚き声を上げて公園から立ち去って行った。
二度目は遍路旅27日目の香川の八栗寺登山口。
金曜の夜の20時過ぎに初老?夫婦がトイレに来訪。
トイレ脇駐輪場で私のテントを見つけた男性が何か発言。
女性が「お止しなさい、可哀想でしょ」と男性を制止した。
男性が何と言ったのかは聞き取れなかった。

住宅街での野宿は治安面は良いが対人トラブルが心配。
このため私は人の少ない場所での野宿を好む。
一方で人の少ない場所は水やトイレが乏しい。
特に野宿地に水が無ければ2L前後事前準備が必要。
水を事前準備し野宿するのは結構身体の負担になる。
今回の四国遍路で野宿地に水が無い所は5箇所。
ただ大半は野宿地の近くで水を確保できて助かった。

もう一つの野宿の留意点は雨天時の対策。
一番良いのは屋根の下で雨を避けて野宿できる事。
今回の遍路旅では屋根の無い所で計7日野宿した。
ただ幸いにも7日共に雨に当たらずに済んだ。
雨に降られたのは東屋か宿屋だったのは幸運だった。
特に今回はテント破損があったためとても助かった。

テントが雨で濡れると手間や不快が増える。
・テントを収納する前に極力水分を拭き取る手間増
・テントに残る水分が荷物の重量増につながる
・テントに残る水分がザック内の湿気増につながる
・テントやザックの湿気で次の野宿が不快になる

野宿に関しては以前にも一度感想記事を書いた。
四国遍路旅の総括14(野宿場所について)
四国以外にもみちのく潮風旅等で野宿もしてきた。
四国野宿と他の野宿も比べつつ感想を記したい。

1 通夜堂(大師堂)
寺関連の野宿所には通夜堂と大師堂がある。
四国遍路の特徴的な野宿施設で空海の遺産だと思う。
通夜堂の宿泊定員(上限)は寺毎で異なる。
最小は1~2人から最大は50人以上(石手寺の120畳)
また通夜堂内の装備も寺によって千差万別。
電気コンセント(充電)は使えない所もあり当てにできない。
充実した所は電気の他風呂や布団が使える通夜堂もある。
通夜堂利用時の懸案(課題)は宿泊に空きがあるかどうか。
寺の施設なので寺の許可を得て利用する事が大前提。
通夜堂利用時は寺のルールに従う。
例えばトイレ掃除を利用許可条件にする通夜堂もある。
通夜堂の名称を使わず遍路宿と名乗る施設もある。
(野宿利用は本来の通夜堂の目的と異なるため)
お堂での礼拝や朝の勤行参加を必須とする施設もある。
また一部の通夜堂は利用料を徴収している所もある。
一方で大師堂は場所により許可の要不要が異なる。
多くは近隣管理所で許可をもらい利用する場合が通例。
一部には特別に許可なく利用できる所もある様だ。
通夜堂・大師堂の両方共通するのは管理者への感謝。
施設の維持管理には手間やお金が掛かる事を心したい。
その配慮を怠り粗末に利用すると施設利用閉鎖に繋がる。
現在コロナ禍もあり10年前に比し2割余が休止・閉鎖状態。
通夜堂・大師堂は人数制限や突然休止等の可能性がある。
○私が利用した通夜堂・大師堂は各1箇所
雲辺寺通夜堂(私は建替前に利用、現在は定員2~3人程)
白藤大師堂(私は建物の軒下でテント泊)
○通夜堂以外の寺関連施設の利用は4回
熊谷寺駐車場、佛木寺前東屋、香園寺奥の院、延命寺休憩所

2 善根宿
歩き遍路を無料で泊める民間運営宿を善根宿と呼ぶ。
10年ほど前までは結構多くの善根宿があった。
しかし宿主の高齢化やコロナ禍で閉鎖する宿が現れた。
一方で香川県等には新しい善根宿も数軒開設された。
宿によっては風呂や洗濯や寝具が提供される所もある。
また一部には1000円程度の実費が必要な宿もある。
善根宿もコロナの影響で休止している宿が未だある。
善根宿も通夜堂と同様定員制限で泊まれない時もある。
○私が利用した善根宿は2箇所
鴨の湯、幸せの黄色いハンカチ小屋(但し非公式善根宿)

3 遍路小屋、東屋、休憩所
遍路小屋と命名された小屋は四国で50箇所以上ある。
この他東屋や休憩所を含めれば200以上有ると思われる。
何れも弱風雨は防げるが強風雨だと建物内に雨風が入る。
ただある程度雨風を防げるので小屋利用の野宿者は多い。
このうち一部の小屋では明確に「野宿禁止」貼り紙がある。
野宿禁止される理由は幾つか考えられる。
・ゴミが放置される
・用便されることで周辺環境が汚れる
・野宿者の占有で他の遍路者の休憩に支障がでる
このため住宅街に近い小屋ほど野宿は困難と思われる。
以前は野宿できたが現在は不可になった小屋も数箇所ある。
遍路者のマナーが小屋の今後の方針に大きな影響を及ぼす。
○私が利用した遍路小屋は3箇所
土佐佐賀温泉(3回)、土佐清水、ひじ川源流の里
○その他で利用した東屋や休憩所
ドライブイン水車、小才角休憩所、湯浪休憩所、中尾休憩所、等々

4 テント場(公称の)
正規(公称)テント場には有料と無料が有り安心して野宿できる。
○私が利用したテント場
コットンフィールド、恵比須浜、二十三士公園、種崎千松公園、須ノ川公園(2回)
(但し二十三士と種崎千松はテント可能な公園で専用キャンプ場で無い)

5 道の駅
水・トイレ・軒下のある道の駅は快適な野宿地で利用者も多い。
一方で「野宿禁止」の道の駅もある(道の駅やす、道の駅むれ等)
過去に野宿者とトラブルがあったと推測される。
また道の駅によっては夜間警備で職務質問の可能性もある。
便利な場所は多くの利用者があるためトラブルも起きやすい。
遍路小屋と同様に遍路者はマナーを守り禁止が増えない事を願う。
○私が遍路で利用した道の駅
道の駅日和佐(2回)、道の駅宍喰、道の駅大山(2回)、道の駅津島、
道の駅みま、道の駅内子

6 公園
トイレや水があり広々とした公園は野宿には好適な場所。
四国遍路以外でも公園で沢山野宿したがトラブル発生経験は無。
近隣住民に目撃されても警察通報等された事も無い。
但し希に野宿禁止公園がある事は留意したい。
(私の知る範囲で土成スポーツ公園と道の駅むれ隣接の公園)
○私が遍路で利用した公園
ドイツ村公園、土成公園、一宮墓地公園、鹿島公園、久万公園、
星の浦海浜公園、常盤公園、三芳公園、山根公園、香東川公園、
一宮新池農村公園、二ッ池親水公園、亀鶴公園

7 廃校舎等、その他施設
四国遍路では一部施設で野宿可能な場所もある。
何れも水やトイレが利用できるありがたい施設。
○私が利用した野宿可能各種施設
大井小学校跡(3回)、おみろく様(2回)、八栗ケーブル下駅

8 海岸や野原、臨機応変場所、等
雨の心配が無い場合は海岸や山中で野宿する事もある。
多くの場合は水やトイレが無いので事前準備が必要。
水に関しては事前に調達できればどこでも野宿できる。
四国以外も含めて私は海岸で野宿する事が多い。
海岸は広くて平らな場所が多くテント設営がし易い。
○私が利用した様々な野宿地
道の駅やす海辺、焼山寺手前山中、宮分の崖地、浅海海岸、
野根漁港(2回)、下ノ加江土手、その他(橋下や川辺)

まとめ
野宿場所は大きく3分類できる様に思う。
1 通夜堂や善根宿等の施設管理者が常駐する場所
2 道の駅や公園や遍路小屋等の非常駐管理者の場所
3 海岸や野原等の公共用地
このうち1では管理者のルールに必ず従う必要がある。
但しルールを守ればとても安心(快適)に施設を利用可能。
一方で快適な所は人気度も高く満室利用不可になり易い。
2の場合は野宿が正規に認められている訳ではない。
ただ管理者や他人に迷惑しなければ野宿が暗黙了解される。
そのためルールを守り人の迷惑にならない事が大切。
例えば道の駅では閉店で来訪者が減る頃にテントを張る等。
また人気の道の駅は空き場所が無い事もあり得る。
1、2、3の順にルール厳守度と快適度が連動している。
ただ全てに共通するルールはゴミの持ち帰り。

私の感想は通夜堂や善根宿は快適で利用したいと思う。
一方で満室で利用できない事態も困る。
このため過去遍路では計画の都合もあるが利用は少ない。
遍路旅で最も利用したのは公園だった。
大半の公園は水トイレが有り東屋がある公園も多い。
東屋があれば雨天の際にとても都合が良い。
公園を利用する際は初めの頃は人目が気になる。
また不審者と思われて警察等に通報される心配もある。
ただ四国以外でも公園野宿したが大きなトラブルは無い。
明確に野宿禁止でなければ公園野宿は結構良いと思う。

ただし以上は私の感想+実体験の範囲での内容。
例えば道の駅では東日本旅で夜間警備に出会った事もある。
その時は偶々同宿者がいて警備員に説明し事無きを得た。
また東北山旅では野宿地手前で警察の職務質問も受けた。
この時は10分以上職務質問された後に漸く解放された。
何時どこで何があるかは全く予測できない。
野宿利用する際もそれは絶えず念頭に置く必要がある。
また現在のコロナ禍では事情が変わる事も十分ある。
何かあった場合の代替案を考えて今後も良い旅をしたい。

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コメント

  1. appleberry より:

    野宿に関するお話、楽しく読ませていただきました。
    私は、海岸野宿が大好きです。
    早朝に出発して、午後2時くらいに歩くのを終え、海岸にキャンプ。テントの中で、誰もいない海を見ながらのんびりと、体の疲れを取りつつコーヒーを飲んだりその日の出来事の日記を書いたり。なので、歩く距離は20kmくらいにおさめています。体の負担もそれくらいがちょうどいいようです。
    徒歩旅は、100人いれば100通りの旅のあり方があるんだろうなあと。そして、そのすべてが参考になるし、自分にも生かせるアイデアに満ちています。
    歩くことによって、見ることのできる歴史、伝統、自然などなど、なんと多いことかと、歩きながらよく思います。
    お体、なんともないことをお祈りいたします。

    • takenamik1 より:

      appleberryさん コメントありがとうございます。
      私も海岸を見ながら歩いたり海岸で波を眺め佇む時間が好きです。
      また海岸で波の音を聞いて眠る事もとても良い気持ちで休めます。
      ただ何れにしても天気が穏やかな事が大前提条件です。
      荒れ狂う波に出会うと底知れぬ恐怖を感じさせられます。
      歩きながら様々な事を取り留めも無く考える時間もまた良いものです。
      体調はほぼ全快に近く回復して今日はこれから登山予定です。
      お気遣い頂きありがとうございます。
      お互いに良い旅のためにも体調を大切にしましょう!