「ガン」と「ドラマ」と「生き方」について

自分の家系の主な死因は「ガン」よりも「あたり」系統。
自分の記憶する範囲では、1人の叔母のみがガンで死亡。
このため「ガン」と聞いても切迫感がない。

しかし正月明けに放映された市川海老蔵・小林麻央夫妻の闘病番組には感銘。
また最近「湯を沸かすほどの熱い愛」という「ガン」映画を観て貰い泣き。
宮沢りえ演じる主人公が余命2か月の末期ガンの宣告を受ける。
最初は悲嘆に暮れたが、自分の使命を果たすため余命を生き抜く。

【以下ネタバレを含む粗筋】(役中の名前でなく俳優名で粗筋紹介)
主人公宮沢りえは銭湯の女将だが旦那のオダギリジョーが1年前に失踪し銭湯は休業。
ジョーは過去の浮気相手の女から2人の間に出来た子の養育を頼まれ、浮気女は失踪。
りえはガンが判明後、探偵を使い失踪旦那を見つけ、旦那と浮気相手の子を家に連れ帰る。
家には中学生の娘(杉咲花)がいるが、中学校で同級生からいじめを受けている。
りえは気弱な旦那に活入れし、小学生の腹違い子も家族同様に扱いながら銭湯を再開。
気弱な花もりえの励ましを受け何とかいじめ生徒に立ち向かい自立していく。
しかし実は花もりえの実の子でない。花を生んだ母は聾唖者で育てる勇気がなく離別。
りえは自ら死ぬ前に花を生母と花を会わせるため小学生の子と3人で旅に出る。
旅の途中で目的のない旅をする松坂桃李に出会い、りえは彼に生きる目的を与える。
無事に花を生みの親に合わせるが、りえ自身が実は母に捨てられた過去がある。
捨てた母を探し出したりえは母に会いに行くが、母は過去を否定してりえを拒絶。
りえの余命が尽きようとした時にりえを大切に思う人達から最後のメッセージが届く。

粗筋では映画の良さは伝わらないが、宮沢りえと杉咲花始め俳優全員が満点演技。
正直な話、ストーリーは作り過ぎで、りえの強い生き方を強調するため盛り沢山過ぎるエピソードが多少鼻についた。
それでも脚本兼監督の「熱い愛」は伝わっており演技には素直に感動した。

この映画を見て直ぐ思い出したのが私の生涯のベスト1映画、黒澤明監督「生きる」。
昭和27年公開。劇場で4回ぐらい、ビデオで5回ぐらい見たと思う。
主人公は宮沢りえ同様、末期ガンの初老男性(志村喬)。
事なかれ主義で生きてきた定年間近かの主人公の役人が、ある日末期の胃ガンと分かる。
助けを求めようとした家族に冷たくされ、酒に溺れ、役所で働く若い女性の生き生きした姿に救いを求める。
しかしそれも儚い現実逃避と悟り、自分に残された時間をどう使うか考えた時、若い時には純粋な気持ちで仕事に取り組んだ心を再び取り戻し、残された僅かな時間を必死で生き抜いて、心に沁みるラストを迎える。
ゴンドラの唄「いのち短し恋せよ乙女」の挿入歌が印象的に使われている。
2つの映画の話はいずれもガン宣告を受けた後に自分の人生を全うした話。

以前のブログで、田部井淳子さんのガン闘病と登山の話を書いた。
田部井さんもガン宣告を受けた後、自分の残りの人生を他人のために尽くした人。
ガン宣告を受けた後は抗ガン治療を続けつつ、出来る限り登山に出かけ福島の高校生に富士山に挑戦する素晴らしさを体験させ続けた。
田部井さんや冒頭で触れた小林麻央さんは、闘病と生きがいを両立しようとする。
宮沢りえや志村喬役の主人公は闘病を捨てて生きがいを選ぶ。
どちらも人それぞれの生き方。

一方で、ガン宣告を受けた後、独自で懸命にガンに闘いを挑んだ人もいる。
英国のスカープラという27歳の男性がH24年に余命2年以内の脳腫瘍と診断された。
効果的治療法は無く、本人は大学時代に専攻した栄養学の知識を基に食事を見直した。
体内のガン細胞を飢えさせるため、1日の炭水化物摂取量を1g以下にする。
一方でビタミンミネラル等の栄養素摂取のため羊の脳や心臓、コオロギを毎日食べた。
その結果3年後には本人の脳腫瘍はほぼすべて消えた(完治ではない)。
英科学雑誌に掲載後、医学界はこの事例に驚愕。偶然彼に発生した事例か、また後遺症はないか、再発の可能性はないか、様々議論がされているが、現在英国や米国の一部の医師が研究調査を行っている。
「コオロギと羊の脳みそを食べて脳腫瘍治した究極の食餌療法」より要約抜粋(文責筆者)
(Courrier Japon H29.2.掲載)
スカープラ氏の場合は、3年間の不味い食事の後で死亡する可能性や、栄養バランスを少し間違えてもクモ膜下出血等の危険性もあったという危険な闘病生活。

因みにスカープラ氏の脳腫瘍に対して効果を発揮した一因の「糖質制限食」に関しては、東洋経済オンライン記事の中に古川健司医学博士の記事が掲載されている。
簡単に言うとガン細胞の唯一のエネルギー源は糖だけ。一方人間は脂肪をケトン体に変えエネルギー源にできるため、ケトン食を続けることでガンを減らしていくことができる。
但しケトン食を続けることが危険な場合もあることは要注意。
「がん細胞を兵糧攻め!究極糖質制限の威力」より要約抜粋(要約文責は筆者)
(東洋経済オンラインH28.11.10.掲載 http://toyokeizai.net/articles/-/144042 )
「ケトン食ががんを消す」(古川健司著、光文社新書H28刊)と言う本も出ている。

この他にも同内容の書籍があるので紹介。
「ブドウ糖を絶てばがん細胞は死滅する!」(福田一典著、彩図社H25刊)

冒頭に触れた私の叔母は7年ほど前に70歳代後半に乳癌で他界した。
叔母は乳癌診断を受ける以前から乳房にシコリがあることや、乳房の脇に黒ずみがある等の異変を分かっていても医者には行かなかった。
医者に行かなかった訳を直接尋ねたことはなかったが家庭事情の要因があったとは思う。
しかし叔母は母方の兄弟姉妹の中で最も聡明で気丈夫な人で、グチや弱音は一切言わなかった。
最後は抗がん剤による延命治療で意識がハッキリしない状況が1か月ほど続いた後に亡くなった。臨終前から立ち会ったが、変わり果てた叔母の姿が今も深く脳裏に焼き付き、人間の死に際を深く考えさせられた。
叔母は家族のため闘病を一時放置。最後は闘病に力尽きて逝った。

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